陽江で社会見学

 

陽江の刀剣工作室については、インパクトのある内容ゆえか、とくに在中歴の長い日本人の皆さんから大きな反響をいただいた。とはいえ、シリアスに刃物の町をご紹介するはずが、嬉々として世紀末と揶揄しているように受け取られかねない表現が一部にあり、猛省している次第。陽江市は、洗練された大都会です。この町のネガティブ・キャンペーンを張ったなどとあらぬ誤解を受けても困るので、あらためて陽江の主力商品の一つ、平和的かつ近代的なハサミ工場の様子をお届けする。

 

どこぞの武器屋と違い、こちらの工場は敷地も広く、なかなかの大規模設備と量産体制を誇っている。主な輸出先は欧米諸国だそうで、日本の百円ショップで買えるモノよりかなり高級だ。ちなみに、欧米人のセンスが 60 年代で止まっているのか、独自の営業戦略なのかは分からないが、なんだかサイケデリック (死語) なモデルが多い。

 

社長のご厚意により、刃に柄を取り付ける工程、2 枚の刃が組み合わさってハサミの形になる工程、出来上がった製品を包装する工程など、つぶさに見学させていただいた。それにしても、この工場には人が多い!ハサミにオートメーションも AI も関係ないのだろうが、人海戦術で、一心不乱にガシャンガシャンとハサミを作り続ける工員を見ていると、産業革命、囲い込みなどの単語が頭にチラつく。時は、まさに改革開放。刃物の町の名声を支えているのは、案外、昨日まで広東の海で漁をしていたおばちゃんたちなのかもしれない。

 

刃物の町

広東省陽江市。広州から車で飛ばして 3 時間、珠海から 2 時間。風光明媚な海沿いの街ゆえ海鮮料理で有名だが、中国随一の「刃物の町」でもある。じつに中国の刃物輸出の 8 割が、陽江からと言うから驚きだ。そんな物騒な称号に負けじとばかりに、陽江の路上は族気質強めのバイクで溢れ、2020 年代にしてなお北斗の拳の風情をたっぷりと味わうことができる。ラッシュ時の赤信号では、「カッとぼうぜっ!!」とばかりに大規模なゼロヨンが自然発生するので要注意。

 

今回、ご縁があって、そんな陽江でも珍しい刀剣工房にお邪魔した。武器商人なんて、某ロールプレイング・ゲームで装備を整えるときにしかお世話にならないと思っていたが、人生分からないものである。これも広東駐在の役得と言うべきか。工房は、期待を上回る荒涼とした土地に有り、周囲には管理者の定かでない家畜やら、野犬やらが闊歩している。過保護に育てられた日本人の感覚的には、工房と言うより、収容施設と言った趣きだ。

 

このところ、日本ではちょっとした日本刀ブームで資産家の投資対象にもなっているようだが、こちらの刀剣の価値は不明。なんだか使い道の分からない物騒な武具まで登場したが、どうせ持ち帰れないし、持ち帰りたくもない。それに、柔よく剛を制す、専守防衛、汚物は消毒が私の信条だ。

 

秘境でもないが、都会でもない陽江。垢抜けて脱色された、最近のシャバい広州が物足りないあなたなら、存分に楽しめるかもしれない。

マカオ空港のすゝめ

広州の魅力の一つに、アジア有数のハブ空港である香港国際空港に比較的容易にアクセスできる点があげられる。香港珠海マカオ直通バスが、香港空港近くのバスターミナルに発着することから、時間帯や便数の心配をすることなく、香港空港 – 珠海間を往来できるようになったのも大きい。一方、忘れられがちなのが、やや影の薄いマカオ国際空港。現在、日本行きフライトは、マカオ航空による成田行きが週 4 便、関空行きが週 5 便とまだまだ限定されてはいるが、東南アジア方面へのフライトは充実しており、場合によっては広州空港より便利なケースも。

 

広州から珠海経由でのマカオ空港へのアクセスは、至って簡単。おなじみの珠海の拱北口岸からマカオに入境したら、目の前のバスターミナルからマカオ空港行きのバス (AP1, AP1X) に乗るだけで、必要なのは運賃の 6 パタカ (MOP) とパスポートのみだ。6 パタカなんて、暴利を貪りすぎだろ!と言う社会派のあなたには、「国境→カジノホテル行き無料バス→空港行き無料バス」と言う裏技があることもお伝えしておく。屋内に運河が走るメガリゾート、ザ・べネチアン・マカオ (The Venetian Macao) や、あのエッフェル塔を擁するパリジャン・マカオ (The Parisian Macao) などでの、無料送迎バス乗り継ぎがオススメだ。

 

マカオ国際空港は、タイパ島東側の海を埋め立て作られた比較的小ぶりな空港だ。こちらを利用するメリットは、なんと言ってもチェックインから搭乗までの移動距離が短く、体力的に楽なこと。中国国内の空港は、近年肥大化の傾向にあり、空港内の移動だけで疲労困憊することも多い。かつて武漢空港の国際線ターミナルは、田舎の公民館くらいの大きさと渋さでなにかと便利だったが、新ターミナル開港以降は空港内でダッシュする機会がずいぶんと増えた。

 

フライトまで時間の余裕があれば、マカオ観光も楽しめて、一石二鳥のマカオ空港。一度、ご利用してみてはどうだろうか?

 

なお、当ウェブサイトでは、広州、香港、マカオを含む、日中間のフライトを「日中フライト時刻表」にて随時更新している。最新の情報を掲載しているので、ぜひ、ご参照いただきたい。   https://www.guangzhou.jp/flight.html

ティファニーのご近所で朝食を

 

マカオを訪れる中国人ツーリスト、その数、年間およそ四千万。日々、化粧品とシャンプーのみを買って帰る、珠海あたりの元気なおばちゃんもそこに含まれるのだろうが、それにしても多すぎる!あれこれの渡航制限も解けた今、宿泊費のインフレは止まるところを知らず、ネットで紹介されるような有名店や観光地のど真ん中では、朝食にありつくのも至難の業だ。十年一昔で、ニ昔ほど前なら、エッグタルトの聖地、カフェ・エ・ナタ (瑪嘉烈蛋撻店) で、体力を使い果たした日本のおじさんたちが気怠い朝を迎えることだって、なんら難しいことではなかったが、今はいつでも長蛇の列。

 

と言うわけで、ウィン・マカオ・ホテル (Wynn Macau Hotel) のベーカリーショップ「如珠如包 (Buns & Bubbles)」に再度登場していただこう。焼きたてのエッグタルトを、途切れなく提供してくれる名店だが、いわゆる惣菜パン、菓子パン、焼き菓子なども、種類豊富でレベルが高い (値段もまあまあ高い)。広州のスーパーにある、申し訳程度のパンコーナーとは大違いで、オーセンティックな西洋食に飢える在中邦人の食欲を大いにそそる。朝は歴史ある飲茶の名店で、とか、五つ星ホテルの朝食付きプランで、などと気合いの入っている方でなければ、寝起きはこちらで美食に疲れた胃を癒すのもおすすめだ。

 

ウィン・マカオでは、館内の人気アトラクション「吉祥樹」を目印にすれば、同店を簡単に見つけることができる。ちなみに、このホテルのショッピング・アーケードはマカオ屈指の高級ブランド店街として有名だ。当然、超高級宝石店のティファニーも威風堂々と居を構えている。現時点では、ティファニー店内でエッグタルトの販売はしていないようだったが、ティファニーから目と鼻の先で手軽にお腹を満たすことはできると言うことで、今回のお題を回収。

【如珠如包 (永利澳門店)】
澳門外港填海區仙德麗街
永利澳門酒店地面層
営業日時: 月〜日 9:00 – 22:00

ウィンパレス・マカオ (Wynn Palace Macau) にも店舗有り

珠海に初出店?

コンチネンタルな紳士淑女の社交場。日本が世界に誇るリストランテの珠海一号店が、絶賛開店準備中だ。なにかと庶民的でリラックスした飲食店が多いのが珠海の魅力だが、ほぼ車道の上 (しかも幹線道路) に座らされたり、振り向けばそこはゴミ集積場だったり、楽しかるべき食事の環境として、理解に苦しむケースもなかなかに多い。ついでに衛生的にもちょっと心配だ。

 

そんなノーブルでスノッブなあなたに朗報。なんとあのサイゼリヤが、満を持して珠海に進出すると言う。場所は、珠海の正面玄関、拱北口岸と鉄道珠海駅を繋ぐ、来魅力・口岸城 (Charming Port City) の 2 階。ショッピング・モール中央のエスカレーターを上がると、莫大な資本を投下した内装現場を確認することができる (2023 年 7 月現在)。開業の暁には、珠海の新名所となること必定だ。

 

なお、珠海初出店と言う部分については、ネット上での仄聞に過ぎないゆえ、もし既に珠海市内で同店の存在を確認しておられる方がいらっしゃれば、何卒、ご一報いただきたい。

また、広州 – 珠海間の移動については、当ウェブサイト内の「珠海から広州へバスで」も参照していただきたい。 https://www.guangzhou.jp/buskwc.html

前山港 (珠海) の香港式茶餐廳

 

珠海市香洲区の前山地域と南屏地域を隔てる前山河。かつては珠海と内陸部を繋ぐ水運の一翼を担っており、数十年前には河口付近の前山港から桂林まで、船旅を楽しむこともできたと言う。そんな交通の要衝だった前山港も、南屏地域の急速な開発、河岸の整備事業に伴いその役割を終え、今はその小ぶりな建物に昔日の面影を残すのみである。今回は、そんな前山港に居を構えるユニークな茶餐廳をご紹介する。

 

漁記茶餐廳 (前山支店) は、珠海人の手による本格的香港式茶餐廳。本店の開業は 2017 年と比較的最近だが、この前山支店も週末は長蛇の列が店外にまで並ぶ人気店だ。ここが珠海の一般的な茶餐廳と一線を画すのは、徹底した香港の茶餐廳の再現にある。香港人のソウルフード、菠蘿包 (パイナップルパン) と奶茶 (ミルクティー) の開発に文字通り心血を注ぎ、メニュー、内装ともに香港の茶餐廳をほぼ完璧に再現している。いかにも香港の店舗にありそうな小物が随所に配置され、壁のタイルの貼り方にも本場再現の強い意気込みとこだわりが感じられる。

 

当然ながら、どの料理も味は折り紙つき。写真は、香港映画の最高傑作「男たちの挽歌 (英雄本色)」冒頭、チョウ・ユンファが皇后像広場で食べていた混酱豬腸粉。こんなシンプルな一皿もしっかり美味しい。

なお、広州 – 珠海間の移動については、当ウェブサイト内の「珠海から広州へバスで」も参照していただきたい。 https://www.guangzhou.jp/buskwc.html

【渔记茶餐厅 (前山店)】
珠海市香洲区港昌路港口一巷201号主体第3、4、5、6间 (前山河边)
営業日時: 月〜日 11:00 – 20:00
拱北、唐家湾などにも店舗有り

マカオ式エッグタルト

阪神か巨人か。馬場か猪木か。バルサかレアルか。バースかクロマティか。けだし世に諍いの種は尽くまじく、香港式とマカオ式のエッグタルト (蛋撻) も、永遠に答えの出ない問いの一つだ。「差唔多〜」などと不粋なことを言ってはいけない。なかにはエッグタルトのためだけに、広州から香港、マカオへと渡る猛者もいるのだ。食感重視の日本人としては、パイ生地を使い、こんがりと焦げ目のついたマカオ式に軍配を上げたいところなので、今回は、マカオのエッグタルトをご紹介する。

 

マカオでエッグタルトと言えば、マカオ半島のリスボア・ホテル裏手に位置するカフェ・エ・ナタ (瑪嘉烈蛋撻店) と、マカオ最南部コロアン島のロード・ストウズ・ベーカリー (澳門安徳魯餅店) の 2 店が有名だ。どの旅行ガイドを読んでも、こちらで本場のエッグタルトを食しましょう、と金科玉条のごとく書いてある。しかし、カフェ・エ・ナタは意外に休みの日が多く、閉店時間も早い。ロード・ストウズ・ベーカリーの本店は歴史的価値はあるのだろうが、なんと言っても遠すぎる。これでは、マカオであれやこれやと多忙な世のお父さん方は、おいそれとエッグタルトを楽しむこともできないじゃ無いか!と言うことになる。そこはご安心あれ。ここはアジアが誇る不夜城マカオ。上記の有名店に勝るとも劣らないクオリティのマカオ式エッグタルトを、夜遅くまで安定供給してくれる店があるのだ。

 

「如珠如包 (Buns & Bubbles)」は、米国資本の IR, ウィン・マカオ・ホテル (Wynn Macau Hotel) 内のベーカリーショップだが、ここで供されるモノがなかなか侮れない。冷房完備の優雅な環境、待ち行列無し、一つ 13 パタカ (MOP) とホテル内にしては良心的な値段で、本格的なエッグタルトを楽しめるなら、もはやなんの文句もない。

 

ウィン・マカオには、有名な噴水ショーや、館内の「吉祥樹」などのアトラクションがあり、ショーのちょっとした待ち時間に、同店をサッと利用するのもおすすめだ。

 

【如珠如包 (永利澳門店)】
澳門外港填海區仙德麗街
永利澳門酒店地面層
営業日時: 月〜日 9:00 – 22:00

ウィンパレス・マカオ (Wynn Palace Macau) にも店舗有り

ピザの神様 (メニュー編)

やはり日本人は信心深いと言うか、我々の生活そのものがアニミズム的信仰と深く結びついているのだろう。大変ありがたいことに、ピザの神様について在中の同胞より、数多のアクティブな反響をいただいた。饅頭 (マントウ) 文化が席巻する大陸で、小麦粉本来の味わいに飢えておられる皆さんのため、今回は「披萨之神 (Dreams of Pizza)」のメニューを紹介させていただく。

 

広州や深圳の近未来的高層ビル街と比較して、ローコスト、ローストレスな珠海の生活に慣れてしまうと、この価格帯は正直高いとも安いとも言えないレベル感だ。とは言え、神様へのお布施の多寡について、とやかく論ずるのは野暮と言うもの。神様のオススメを迷わずオーダーしてこそ、ご利益にあやかれる。豊富なラインナップ中に、中華料理との強引なフュージョンが散見されるのはご愛嬌だ。

 

これを機に広州からの邦人参拝客が急増すれば、当店が普陀寺、金台寺や珠海漁女 (?) など、珠海の古寺名刹に並び称される日も近い。

 

なお、広州 – 珠海間の移動については、当ウェブサイト内の「珠海から広州へバスで」も参照していただきたい。 https://www.guangzhou.jp/buskwc.html

【披萨之神 (柠溪店)】
珠海市香洲区柠溪路284号 (柠溪文化广场首层)
営業日時: 月〜日 11:00 – 20:30

ピザの神様 (立志編)

古より、日本人の信仰と言えば八百万の神と相場が決まっていて、田畑から米粒まであらゆるモノに神様が宿ると先人たちは考えてきた。あろうことか、かの珠海には八百万の神々もびっくりのピザの神様が鎮座ましますという。これは無類のピザ好きとして、一度参拝しておかねばと言うわけで、なにかと因縁の「檸溪文化広場」に向かった。

20 年前は珠海で最高にクールでイケてるスポットだった檸溪文化広場は、今でも妙齢のご婦人がたの広場舞の聖地として、なかなかの盛況だ。今日は、そんな彼女たちを横目に、半円形の建物の一階にある「披萨之神 (Dreams of Pizza)」を目指す。お世辞にもご利益がありそうな内装では無いが、窓際の席に陣取ってレモンティーの一杯も注文すれば、気分は老香洲の本地人。

 

メニューは、円形のピザ、四角いピザ、深皿で焼くシカゴピザの 3 種に大別される。どれもチーズを全くケチらないあたり、さすが神様の貫禄だ。特にシカゴピザはカロリーに要注意だが、珠海でも珍しいのでぜひトライを。サラダやサイドメニューも、量をケチらない方針を貫いているので、オーダーの際は冷静に。

 

なお、神様にあれこれ論評を加えるのは不敬にあたるゆえ、味についてのコメントは差し控えさせていただく。

また、広州 – 珠海間の移動については、当ウェブサイト内の「珠海から広州へバスで」も参照していただきたい。 https://www.guangzhou.jp/buskwc.html

【披萨之神 (柠溪店)】
珠海市香洲区柠溪路284号 (柠溪文化广场首层)
営業日時: 月〜日 11:00 – 20:30

香港大学に行ってみよう (学術編)

アジア屈指の象牙の塔に潜入して、濃い顔のインド人見ながら、インド飯食べるだけなら、やってることが重慶マンションと同じじゃないか!と、お嘆きのあなた。今回は、そんな意識高いあなたも納得の、大学内知的スポットをご案内する。

 

まずは地質博物館。香港を訪れた日本人は「こんな野放図に高層ビル建てちゃって、香港って地震無いの?」と言う問いを必ず一度は口にする。その答えを知りたければ、ぜひこちらに!香港に地震は無くはないし、ビルもまあまあ安全なんだよ。と、学術的な解説がされている。他にも、ちょっとした子供くらいの大きさのアンモナイトの化石など、入場無料の割に見所豊富だ。ただし、大学内の施設ゆえ開館時間が平日午後のみなので注意。

 

次は、既述のビジターセンターの隣りにある、これも古くて可愛らしい建築物を利用した香港大学出版社書店。観光客で溢れるビジターセンターと違い、入店するのもちょっと敷居が高い感じだが、いかにも大学の書店と言う懐かしい雰囲気なので、怖気付かずに入店してみて欲しい。香港について興味のある方なら、香港大学出版社の質の高い刊行物の数々は、よいお土産になるはずだ。

 

なお、中国国内から香港への移動については、当ウェブサイト内の「珠海から香港へバスで」も参照していただきたい。 https://guangzhou.jp/bushkg.html

【The University of Hong Kong】
Pok Fu Lam, Hong Kong, Hong Kong SAR