「男たちの挽歌 (英雄本色)」なら銅鑼湾のチョウ・ユンファ車清掃ビル、「インファナル・アフェア (無間道)」なら上環のアンソニー・ウォン墜落ビル、「ファイト・バック・トゥー・スクール 2 (逃學威龍 2)」なら寳馬山の漢基國際学校など、香港には、香港映画を生き甲斐とする日本人のテンションがおかしくなる、映画ロケ地が数多く存在する。それは、広大とは言えない香港であれだけの数の映画を生み出したのだから、ファンが巡礼すべき聖地が至るところにあって当たり前とも言えるが。。。翻って、80 年代以降の香港映画黄金期には、広州や深圳などの中国本土はあくまで映画の味付けとしてしか登場せず、本格的な本土ロケと言えば、香港で撮影しにくい時代劇や戦争シーンなどがメインだった。
1999 年、世界の映画界を震撼させた一本の映画が、珠海で撮影される。2001 年公開の「少林サッカー (少林足球)」だ。すでに「食神」や「喜劇之王」で、香港では飛ぶ鳥を落とす勢いだったチャウ・シンチーの実質的世界デビュー作。今作は、当時の香港映画興行収入記録をかるく塗り替え、じつに世界 32 か国で上映された。
この記念碑的映画の多くの部分が珠海で撮影されたことは意外に知られていない。今回、訪れたのはヒロイン (ヴィッキー・チャオ) の勤務する饅頭屋の店先。ここでヒロインが披露する太極拳がのちのストーリー展開にも大きな役割を果たす。また、有名なダンスのシーンの背景に映り込む、香山公園の南門もこの店の向かいにある。率直に言ってしまえば珠海市内のどこにでもありそうな路地だが、ロケハンでここを見つけ出したスタッフの慧眼により、映画史に残る名場面が生まれた。広州在住の香港映画ファン、シンチー・ファンには、一度は訪れていただきたい珠海の名所だ。
他にも、決勝戦の宿舎は珠海度假村酒店、決勝戦は珠海市体育中心のスタジアム、どちらも珠海市内で撮影されている。